2021/07/11 蛍の光

日本の夏の風物詩の一つに「蛍」の鑑賞が挙げられます。

「蛍」が日本の文献に初めて登場したのは、およそ千三百年前、奈良時代に編纂された『日本書紀』の記述です。但し、当時の蛍は、現代の印象とはまったく異なり、邪悪な神の象徴として描かれていたのです。

当時、日没後に地上で光を放つのは、「火」だけでした。そのため、熱を発することなく青白く光る蛍は、得体が知れず不気味なものと考えられていたのです

蛍の見方が変わったのは、平安時代になってからのことでした。その頃、盛んに学ばれた漢詩には、蛍は「風情あるもの」として紹介されており、かつての悪い印象は払拭され、「愛でられる存在」になったといわれます。

時代が変わったとはいえ、蛍の性質が変わったわけではないでしょう。変わったのは蛍ではなく、私たち人間の捉え方なのです。

現代を生きる私たちも、思い込みで人や物事を判断してしまうことはないでしょうか。蛍の光を愛でるように、何事にも美点を探したいものです。

今日の心がけ◆季節の風情を尊びましょう