Kさんが、ある取引先を訪問した時のことです。
案内係に応接室へ通され、「本日はお越しいただきありがとうございます。どうぞこちらにおかけください」と示された右手の先は、ドア近くの下座でした。
〈案内係なのに席次のマナーも知らないのか〉とKさんが顔を曇らせていると、面談の約束をしていたO氏がにこやかな表情で現われ、上座に向かいました。
「本来ならこちらの上座にご案内すべきところ、ご無礼をお許しください。初めてお越しいただいたKさんに、ぜひこの景色をお目にかけたかったのです」
そう言いながらO氏は大きな窓の方を振り向きました。その視線の先を追うと、新緑の木々の向こうに、地元きっての雄大な名山が一望できたのです。
「おお!」と思わず声を漏らしたKさんは、案内係とO氏が連携した粋なほからいに感動すると共に、自身の早合点を反省したのでした。
礼儀作法やマナーに準じることは大切ですが、その時その場に応じた臨機応変な応対をすることも時にはあるものです。
今日の心がけ◆臨機応変に振る舞いましょう